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ポリスチレンスルホン酸カルシウムによる回腸狭窄イレウス

2013年4月掲載

薬剤 ポリスチレンスルホン酸カルシウム循環器官用剤
副作用 回腸狭窄イレウス
概要 75歳、男性。腹痛・嘔気により近医受診、イレウス所見のため内科・消化器科に入院した。慢性腎不全に伴う高カリウム血症のため69歳時からポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)を内服していた。回腸に5cm長の狭窄と腸管拡張を認め、減圧後回腸部分切除を施行した。切除標本では狭窄部に腫瘍や癒着・血栓などは認めず、びまん性の炎症細胞浸潤と漿膜側の線維化、炎症性肉芽組織、粘膜下層に好塩基性異物と異物型巨細胞の集簇や線維化・肉芽化を認めた。好塩基性異物の特殊染色によりCPS顆粒沈着による回腸狭窄と診断した。

監修者コメント

高カリウム血症改善剤であるポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)の内服により回腸狭窄をきたした稀な一例である。本剤の添付文書「重大な副作用」の項に、腸管穿孔・腸閉塞が記載され注意が求められている。著者は考察で、「本症例では便秘の既往はなかったが、全身性の動脈硬化、腹部大動脈瘤手術歴、慢性腎不全に伴う腸血管収縮などにより、慢性的な腸管の血流低下・虚血から虚血性腸炎を繰り返し、その過程でCPS顆粒が粘膜下に取り込まれて線維化・肉芽形成を来した可能性がある」と述べている。CPSやポリスチレンスルホン酸ナトリウム(SPS)などのイオン交換樹脂の使用時には、便秘症状がなくても消化管穿孔・狭窄のリスクがあることを念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
加藤総介ほか
所属施設名
札幌社会保険総合病院内科・消化器科ほか
表題(演題)
ポリスチレンスルホン酸カルシウムにより回腸狭窄イレウスを来した1例
雑誌名(学会名)
日本内科学会雑誌 102(1) 150-152 (2013.1)

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