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三二酸化鉄(チラーヂンS®錠の添加物)による薬物性肝障害

2013年4月掲載

薬剤 三二酸化鉄その他
レボチロキシンナトリウムホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 薬物性肝障害
概要 65歳、女性。腺種様甲状腺腫のため甲状腺亜全摘出術を施行され、以後チラーヂンS錠®75μg/日服用、約1年後肝胆道系酵素上昇を認め第三内科紹介受診された。諸検査によりウイルス性、自己免疫性肝炎、閉塞性黄疸は否定的で、脂肪肝も認められなかった。DDW-J2004ワークショップ薬物性肝障害スコアリングは5点で、チラーヂンS錠による肝細胞障害型薬物性肝障害の可能性が高かった。レボチロキシンNa®錠へ変更したが肝障害の改善は認められず、チラーヂン末®に変更したところ肝胆道系酵素は正常範囲にまで軽快した。これらの薬剤の添加物の違いから、三二酸化鉄が肝障害の原因と考えた。

監修者コメント

合成T4製剤であるチラーヂンS錠®やレボチロキシンNa®錠の内服によって肝障害をきたした一例である。東日本大震災による供給不足によりチラーヂン末®に変更を余儀なくされたところ、偶発的に肝障害が軽快し、原因が合成T4製剤に含まれる添加物であることが判明したという興味深い報告である。合成T4製剤の内服でも稀ではあるが肝障害を来たす可能性があるので注意喚起が必要である。

著者(発表者)
土岐真朗ほか
所属施設名
杏林大学第三内科
表題(演題)
チラーヂンS®チラーヂンS®錠の添加物によって発症したと考えられた薬物性肝障害の1例
雑誌名(学会名)
日本内科学会雑誌 102(1) 143-146 (2013.1)

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