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クリンダマイシンによる固定薬疹

2013年4月掲載

薬剤 クリンダマイシン抗生物質製剤
副作用 多発性非色素沈着型固定薬疹
概要 28歳、女性。扁桃腺炎のため近医でクリンダマイシン600mg、ベタメタゾン2mgの点滴を1回受け、同日からセフカペンピボキシル、ロキソプロフェン、セラペプターゼの内服を開始した。数日後から頸部、左上腕、腰部、左大腿にそう痒を伴う皮疹出現、数日で色素沈着を残さず消失した。1年4ヵ月後、再び近医でクリンダマイシン600mg、ベタメタゾン2mgの点滴を1回受け、同日よりレボフロキサシンを服用したところ、翌日から同様の皮疹が出現した。精査のため皮膚科を受診、プリックテストで被験薬は全て陰性であったため、患者の同意を得てクリンダマイシンの点滴注射誘発試験を行った。60mgまで反応がなかったが、600mgで投与3時間後右頸部に鶏卵大のそう痒を伴う浮腫性紅斑出現、左上腕近位1/2のほぼ全周性に、左大腿部後面に手掌大の、腰部に鶏卵大の、それぞれ同様の紅斑が出現した。これらの紅斑は徐々に消褪し、数日で色素沈着を残さずに消失した。以上により、クリンダマイシンによる多発性非色素沈着型固定薬疹と診断した。

監修者コメント

固定薬疹とは、特定の薬剤が原因となり、原因が加わるごとに同一部位に発疹が生ずるものである。アセトアミノフェンやミノサイクリンなどの薬剤による固定薬疹は多く報告されているものの、クリンダマイシンによる多発性非色素沈着型固定薬疹はこの報告が初めてであり興味深い。固定薬疹を繰り返すと皮膚粘膜眼症候群や中毒性表皮壊死症などの重篤な副作用に進展することがあるため、注意が必要である。

著者(発表者)
五木田麻里ほか
所属施設名
西神戸医療センター皮膚科
表題(演題)
クリンダマイシン製剤による多発性非色素沈着型固定薬疹の1例
雑誌名(学会名)
皮膚の科学 11(5) 403-408 (2012.10)

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