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母体フェンタニル投与による新生児薬物離脱症候群

2016年8月掲載

薬剤 フェンタニル非アルカロイド系麻薬
副作用 新生児薬物離脱症候群
概要 30歳、女性。24歳時から重度の神経因性疼痛に対して経皮吸収型フェンタニルを6年間使用していた。妊娠37週にフェンタニル、レミフェンタニル等を麻酔薬とした全身麻酔下で帝王切開が施行された。生後48時間に出生した男児に振戦、易刺激性、原始反射亢進など中枢神経症状が出現した。Finneganスコア10点で、新生児薬物離脱症候群(NAS)と診断し、治療開始基準の8点を超えたためフェノバルビタールを開始したところ、症状は速やかに改善し、スコア5点未満となった。フェンタニルの血中濃度は生後48時間で半減しており、その時期に一致して症状の出現を認めており、NASの経過として矛盾はない。

監修者コメント

NASは向精神薬の投与、または麻薬を乱用している母体から出生した児において、薬物血中濃度の低下に伴い中枢神経症状、自律神経症状、消化器症状などを認める疾患である。本症例では、経皮吸収型の麻薬性鎮痛薬であるフェンタニルを長期間投与された母体から出生した児においてNASを発症し、フェノバルビタールの投与により軽快した。フェンタニル単剤の長期投与によるNASに対して薬物治療を行った報告はこれまでになく、示唆に富む一例といえる。

著者(発表者)
宮路尚子ほか
所属施設名
太田記念病院小児科ほか
表題(演題)
母体フェンタニル投与による新生児薬物離脱症候群の1例
雑誌名(学会名)
日本周産期・新生児医学会雑誌 52(1) 105-109 (2016.5)

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