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大建中湯エキスによる薬剤性肺障害

2016年5月掲載

薬剤 大建中湯エキス漢方製剤
副作用 薬剤性肺障害
概要 76歳、男性。肝細胞がんのため入院し、術後の腸閉塞予防および腫瘍への抗炎症効果を期待して、手術7日前より大建中湯エキスが処方された。術後第4病日より労作時息切れと乾性咳嗽を訴え、胸部単純X線写真で両肺びまん性にすりガラス陰影を認めた。抗菌薬の効果が乏しく、胸部陰影が増悪したため当科を受診した。発症前に服用を開始した大建中湯による薬剤性肺障害を疑い、リンパ球刺激試験で陽性を示した。大建中湯の中止後、症状と胸部異常影は軽快し、術後第22病日に治癒した。

監修者コメント

大建中湯は消化器がん術後の腸閉塞の予防などに広く使用されている。漢方薬、特に小柴胡湯による薬剤性肺障害のリスクとして慢性C型肝炎が報告されており、本症例においても慢性C型肝炎が肺障害のリスク因子の1つとなった可能性が考えられた。本薬剤は肺障害を惹起しやすい生薬成分を含んでおらず、薬剤性肺障害の副作用は稀とされているが、本薬剤の投与後に呼吸器症状や胸部X線で異常陰影を認めた際には薬剤性肺障害の合併に注意する必要がある。

著者(発表者)
鈴木慎太郎ほか
所属施設名
イェテボリ大学医学部クレフティングリサーチセンターほか
表題(演題)
大建中湯エキスによる薬剤性肺障害が疑われた1例
雑誌名(学会名)
呼吸と循環 64(3) 313-318 (2016.3)

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