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アミオダロンによる肝硬変

2016年2月掲載

薬剤 アミオダロン循環器官用剤
副作用 肝硬変
概要 75歳、女性。高度大動脈弁狭窄症に対して、2年半前に他院で機械弁を用いた大動脈弁置換術を受けた。その周術期に発作性心房細動が出現したため、以後アミオダロンを内服していた。ワルファリン1mgでプロトロンビン時間の国際標準比(INR)は2.0~3.5に安定していた。2週間ほど前から皮下出血を自覚し、経時的に全身に広がっており、精査加療目的で循環器内科に入院した。肝胆道系酵素は上昇し、肝硬変が疑われ、プロトロンビン時間のINRは6.68まで延長していた。肝機能障害の原因検索を行ったがウイルス性や自己免疫性、代謝性は否定的でアミオダロンによる薬剤性が疑われた。アミオダロンの中止とワルファリンの用量調整でINRは安定したが、肝機能、腎機能の悪化で死亡した。

監修者コメント

アミオダロン(アンカロン®)は器質的心疾患を伴う心房細動や致死性不整脈の治療に多くのエビデンスを有している。一方で、極めて長い半減期や多様な心外副作用があるため、アミオダロンの導入には注意を要する。本文献では、アミオダロンにより非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD)が進展し、最終的に肝硬変に至ったと考えられる一例を紹介している。これまでにもアミオダロンにより非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis, NASH)を発症した症例が報告されているが、肝障害が疑われる患者にアミオダロンを投与する場合には、血液検査やCTを含めた慎重な経過観察が重要である。

著者(発表者)
辻亮多ほか
所属施設名
松下記念病院循環器内科ほか
表題(演題)
アミオダロンが原因と考えられた肝硬変の1例
雑誌名(学会名)
松仁会医学誌 54(1) 33-38 (2015.10)

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