炭酸リチウムによるリチウム中毒
2016年1月掲載
薬剤 | 炭酸リチウム中枢神経用薬 |
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副作用 | リチウム中毒 |
概要 | 60歳代、男性。双極性感情障害と診断され、炭酸リチウムが投与されていたが、血中濃度の異常値は認めなかった。1年ほど前から高血圧の悪化によりロサルタンカリウムの投与が開始された。2ヵ月前に院内採用薬変更のため、ロサルタンカリウムからアジルサルタンに変更されたが、血圧、精神状態は変わらず経過した。ある日、看護師がバイタル測定したところ、低血圧、徐脈であった。リチウム濃度が高く、重度リチウム中毒であることが判明し、炭酸リチウムを中止したところ、血中濃度低下とともに、症状は徐々に改善した。 |
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炭酸リチウムは双極性感情障害の治療に広く有効性が示されている一方、有効域と中毒域が近く、他剤との相互作用で血中リチウム濃度の上昇に伴うリチウム中毒が問題となっている。本症例は、炭酸リチウムの長期間内服中、併用していた降圧剤であるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の同種同効薬への切り替え後に、リチウム中毒を発症した。ロサルタンカリウムから血中濃度半減期の長いアジルサルタンに変更したことにより、リチウム中毒に至ったと考えられる。リチウム製剤が投与されている患者には、定期的な血中濃度のモニタリングだけでなく、処方変更時や症状の変化が生じた際にはリチウム中毒を疑い、適切な対応をとる必要がある。
- 著者(発表者)
- 常岡俊昭ほか
- 所属施設名
- 昭和大学附属烏山病院ほか
- 表題(演題)
- 炭酸リチウム内服中にアンジオテンシンII受容体拮抗薬の変更をきっかけにリチウム中毒となった1症例
- 雑誌名(学会名)
- 精神医学 57(9) 761-765 (2015.9)
2014年度 東京精神科病院協会学術集会
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