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インフリキシマブによるIgA血管炎

2016年1月掲載

薬剤 インフリキシマブ消化器官用薬
副作用 IgA血管炎
概要 17歳、男性。小腸大腸型クローン病に対してインフリキシマブの投与が開始された。開始後は著明な改善を示した。インフリキシマブ開始19カ月後に、特に誘引なく四肢に散在性の紫斑が出現するようになった。Henoch-Schönlein紫斑病の診断基準4項目のうち3項目を満たし、IgA血管炎と診断し、プレドニゾロンの投与により紫斑は消失した。インフリキシマブによるIgA血管炎の可能性を考慮したが、クローン病治療に抗TNFα製剤は不可欠と判断し、インフリキシマブを中止し、アダリムマブに変更した。アダリムマブに変更後21カ月後に紫斑の再発を認めるようになった。慎重に経過観察を行いつつクローン病の治療を優先したアダリムマブの投与を継続中である。

監修者コメント

抗TNF-α抗体製剤であるインフリキシマブ(レミケード®)およびアダリムマブ(ヒュミラ®)は、関節リウマチや炎症性腸疾患に対する生物学的製剤として大きな効果をあげている。インフリキシマブがマウス由来の部分を含むキメラ型であるのに対し、アダリムマブは完全ヒト型であり、アレルギー反応が起こりにくいとされている。本症例では、クローン病に対してインフリキシマブ投与後にIgA血管炎(旧称:Henoch-Schönlein紫斑病)を発症し、アダリムマブに変更後も紫斑の再発を認めた。炎症性腸疾患患者の増加ならびに抗TNF-α製剤の適応拡大に伴い、今後はIgA血管炎の副作用も増加することが予想され、注意が必要である。

著者(発表者)
西川潤ほか
所属施設名
富山県済生会富山病院内科ほか
表題(演題)
抗TNF-α製剤投与によりIgA血管炎を発症したクローン病の1例
雑誌名(学会名)
日本消化器病学会雑誌 112(10) 1852-1857 (2015.10)

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