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フェノバルビタールによる薬剤性貧血

2015年11月掲載

薬剤 フェノバルビタール中枢神経用薬
副作用 貧血
概要 3歳、男児。生後より重度の発達障害を認め、著明な筋緊張の亢進のため薬剤の投与を行っていたが、コントロール不良のため3歳時よりフェノバルビタール(PB)の投与を開始した。1歳8ヵ月時に腎摘出術、腹膜透析カテーテル挿入術を施行した。血中濃度が安定しなかったため、PBを増量した。増量後は筋緊張の消失を認めたが、徐々にヘモグロビン(Hb)とヘマトクリット(Ht)の低下を認め、投与2か月後にはHb5.7g/dL、Ht17.8%と著明な貧血を認めたため入院となり、輸血を施行した。血液検査では赤血球以外の血球成分の低下を認めなかった。入院時の貧血は大球性正色素性貧血であった。PBの影響が考えられたため、投与を中止したところ速やかな改善を認めた。

監修者コメント

PBは長時間型のバルビツール誘導体であり、抗痙攣作用と鎮静作用を持ち、不安緊張状態の鎮静やてんかんのけいれん発作などに使用されている。本文献では、腹膜透析中の患児にPBを投与し、大球性正色素性貧血を発症した症例を報告している。腹膜透析によりPBの血中濃度が不安定となり、過剰投与になってしまったことが貧血の原因と考えられる。本症例のように腹膜透析を施行している患者では、PBの血中濃度が正常であっても、臨床的に副作用が疑われる場合は、減量・中止や他の薬剤への変更を考慮すべきである。

著者(発表者)
笹田洋平ほか
所属施設名
千葉県こども病院腎臓科
表題(演題)
フェノバルビタールによる薬剤性貧血が考えられた1男児例
雑誌名(学会名)
日本小児腎不全学会雑誌 (35) 258-260 (2015.7)

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