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カペシタビンによる重篤副作用

2015年10月掲載

薬剤 カペシタビン腫瘍用薬
副作用 口内炎/嘔吐/下痢/発熱/白血球減少/血小板減少/播種性血管内凝固/意識障害
概要 56歳、女性。盲腸癌に対し回盲部切除術を施行し、病理組織学的診断はStage IIIaであった。術後37日お目より術後補助化学療法としてカペシタビン内服を開始した。内服8日後に口内炎が出現し、10日後に中止した。内服中止後2日目に嘔吐、下痢が出現し入院した。5日目に39℃の発熱、白血球減少、血小板減少が出現し、抗生剤、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)投与を開始した。しかし、播種性血管内凝固、意識障害なども合併し、全身状態が急激に悪化した。抗菌剤追加、γグロブリン投与、G-CSF増量、DIC治療、血小板輸血などを行うとともに、血液透析を施行した。内服中止後13日目には意識が回復し、17日目には解熱し血液検査所見も改善した。尿中ピリミジン分析、遺伝子検査からジヒドロピリミジナーゼ(DHP)欠損症と診断した。

監修者コメント

カペシタビン(ゼローダ®)は5-FUのプロドラッグであり、体内で代謝されることによって5-FUに変換されて抗腫瘍効果を発揮する。5-FUは肝臓でDHPなどのピリミジン分解酵素により代謝される。本症例は盲腸癌の術後補助化学療法としてカペシタビンを投与したところ、播種性血管内凝固や意識障害などの重篤な副作用を発症し、後の遺伝子検査によりDHP欠損症であることが判明した。DHP欠損症は極めてまれな疾患であり、効果、費用の面から、5-FU系の抗癌剤を投与する症例の全例に遺伝子検査を行うことは現実的に難しい。早期に重篤な副作用を発症する症例では、5-FUの代謝異常も念頭に置き、血液透析の導入を含めた適切な治療を行うことが重要である。

著者(発表者)
山下洋ほか
所属施設名
岩手県立中部病院外科ほか
表題(演題)
カペシタビン内服により重篤な副作用を来したジヒドロピリミジナーゼ欠損症の1例
雑誌名(学会名)
日本消化器外科学会雑誌 48(7) 644-649 (2015.7)

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