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ジアフェニルスルホンによるメトヘモグロビン血症

2015年8月掲載

薬剤 ジアフェニルスルホン外皮用薬化学療法剤
副作用 メトヘモグロビン血症
概要 67歳、女性。股関節脱臼に対して人工関節置換術が予定された。25年前から顔面皮疹が出現し、血管炎との診断でジアフェニルスルホン、プレドニゾロンの内服を開始した。10年前には原疾患不明ながら、在宅酸素療法を導入された。手術は全身麻酔および硬膜外麻酔で行った。気管挿管後FiO2が0.46の条件下でSpO2は96%であったが、動脈血ガス分析を行ったところ、SaO2が87.1%であり、 SpO2とSaO2の乖離を認めた。また、MetHbが9.2%であり、低SaO2の原因としてMetHb血症が疑われた。手術開始2時間半後頃からメチレンブルーの点滴静注を開始し、MetHb3.3%と改善を認めたが、術後第2病日にはMetHbは10.8%まで上昇した。MetHb血症の原因としてジアフェニルスルホンを疑い、内服を中止したところ、第13病日には2.4%まで改善した。

監修者コメント

メトヘモグロビン(MetHb)はHbが酸化され、鉄イオンが2価から3価となったものである。MetHbは酸素と結合できないため酸素を運搬することが出来ず、MetHbが増加するほど末梢組織における酸素供給が減少する。MetHb血症の診断にはSpO2とSaO2の乖離がその根拠の一つとなる。本症例は、全身麻酔中に SpO2とSaO2の乖離を認めたことで MetHb血症が判明した稀な一例である。原因としては、内服していたジアフェニルスルホンが考えられた。在宅酸素療法が導入されていたが、ジアフェニルスルホンの中止により、 MetHb血症が改善し、在宅酸素療法から離脱した。呼吸器系や循環器系に異常を認めないながらもSpO2が低値である場合には、 MetHb血症を念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
橋本一哉ほか
所属施設名
神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科・集中治療部
表題(演題)
全身麻酔を契機に薬剤性メトヘモグロビン血症が判明した一例
雑誌名(学会名)
日本集中治療医学会雑誌 22(3) 223-224 (2015.5)

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