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ダサチニブによるネフローゼ症候群

2015年6月掲載

薬剤 ダサチニブ腫瘍用薬
副作用 ネフローゼ症候群
概要 t(9;22)を伴う急性リンパ性白血病の症例に対し、JALSG ALL208に準じたダサチニブ(DAS)を含む化学療法を行い、完全寛解を確認した。その後地固め療法1コースを行い、DASを増量した。再入院時に顔面と両下腿の浮腫を認め、1日尿蛋白量3.89g、血清アルブミン量3.2g/dL、血清総コレステロール値269mg/dLであることから、ネフローゼ症候群と診断した。2週間を越えるプレドニゾロンの投与を行ったが、改善を認めなかった。胸水貯留の出現を認めたため、DASを休薬したところ、ネフローゼ症候群は速やかに改善した。

監修者コメント

チロシンキナーゼ阻害薬であるダサチニブはBCR-ABLをはじめとした複数のチロシンキナーゼを標的としており、慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病の治療に用いられている。本症例では、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病に対してダサチニブの投与を開始したところ、浮腫や胸水などを認め、ネフローゼ症候群と診断された。また、ネフローゼ症候群の発症がダサチニブの用量依存性であることも示唆された。頻度は少ないものの、ダサチニブの投与中にネフローゼ症候群が合併することがあり、特に高齢者や低体重の患者では注意が必要である。

著者(発表者)
平野太一ほか
所属施設名
熊本市立熊本市民病院血液・腫瘍内科
表題(演題)
地固め療法中にDasatinibによるネフローゼ症候群を来したPh陽性急性リンパ性白血病の1例
雑誌名(学会名)
第5回 日本血液学会九州地方会 抄録集 15 (2015)
第5回 日本血液学会九州地方会 (2015.3.14)

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