せりみっく 今月の症例

ホーム > 新着文献  > サリドマイドによる甲状腺機能低下症

サリドマイドによる甲状腺機能低下症

2015年5月掲載

薬剤 サリドマイド腫瘍用薬化学療法剤
副作用 甲状腺機能低下症
概要 69歳、男性。多発性骨髄腫に対してDexamethasone大量療法、MP(Melphalan、Prednisolone)療法にて効果が認められなかったため、Thalidomide(THAL)単剤療法に切り替えた。開始2ヵ月でPRを得たが、同時期から倦怠感、便秘、眼瞼浮腫と両側下腿に浮腫が出現した。内服を中止したが、肝機能障害、腎機能障害も出現したため、入院となった。TSH高値、freeT4低値で、THAL開始前の甲状腺機能は正常であり、経過からTHALによる甲状腺機能低下症と考えられた。甲状腺ホルモン補充療法を開始し、2ヵ月後にはTSH、freeT4が正常化した。治療中断により多発性骨髄腫が増悪したため、甲状腺ホルモン補充療法を併用しながらTHALを再開し、PRを得た。

監修者コメント

THALなどの免疫調整薬が多発性骨髄腫の治療に導入され、患者の生存期間が延長するなどの効果をあげている。THALによる甲状腺機能低下症は欧米では多く報告されているが、本邦では稀である。倦怠感、脱力、抑うつ、便秘、浮腫などの甲状腺機能低下症の主な症状は、悪性腫瘍の患者では頻繁に認められるため、見落とされてしまう可能性もある。多発性骨髄腫に対してTHALを投与する際は、定期的なTSH測定などの甲状腺機能のスクリーニングを行うことが有用であると考えられる。

著者(発表者)
岡村郁恵ほか
所属施設名
静岡県立静岡がんセンター血液・幹細胞移植科ほか
表題(演題)
Thalidomideによる甲状腺機能低下症をきたした多発性骨髄腫
雑誌名(学会名)
臨床血液 56(1) 38-40 (2015.1)

新着文献 一覧

PAGETOP