トラスツズマブによる心不全
2015年2月掲載
薬剤 | トラスツズマブ腫瘍用薬 |
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副作用 | 心不全 |
概要 | 49歳、女性。乳癌と診断され、乳房温存術が施行された。術後に放射線療法と化学療法(エピルビシン630mg/m2+シクロフォスファミド)が施行されたが、肺転移、リンパ節転移が認められたため、ゲムシタビン+トラスツズマブによる化学療法を施行した。その後、呼吸苦を認めるようになり、当院受診。肺うっ血、心拡大を認め、トラスツズマブによる急性心不全の診断で入院となった。低心拍出量症候群が疑われ、ドブタミンを開始したが、徐々に尿量の低下を認めた。補助循環が必要と判断し、大動脈内バルーンパンピング(IABP)を導入した。その後、IABPを離脱し、入院約3ヵ月で独歩退院となった。 |
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抗HER2モノクローナル抗体製剤であるトラスツズマブの投与により薬剤性心筋症、心不全をきたした乳癌の一例である。これまでにもトラスツズマブの投与により心機能低下、心不全を引き起こすことが報告されているが、危険因子として、アントラサイクリン系抗癌剤の併用、高齢などが指摘されている。本症例においてもアントラサイクリン系抗癌剤の投与の既往があり、このような危険因子を持つ症例では注意深い経過観察が必要である。
- 著者(発表者)
- 服部英敏ほか
- 所属施設名
- 国立病院機構横浜医療センター循環器内科
- 表題(演題)
- 大動脈内バルーンパンピングを必要としたトラスツズマブによると考えられる心不全の1例
- 雑誌名(学会名)
- 心臓 46(11) 1470-1475 (2014.11)
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