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シタグリプチンによる急性汎発性膿疱性発疹症

2013年1月掲載

薬剤 シタグリプチンその他の代謝性医薬品
副作用 急性汎発性膿疱性発疹症
概要 57歳、男性。2型糖尿病にピオグリタゾン、グリメピリド、メトホルミンを、高血圧に対しジルチアゼム、テルミサルタンを、狭心症に対しニコランジルを内服、加療中。その後、2型糖尿病にシタグリプチンを開始、6日後に38℃の発熱と顔面発赤、腫脹が出現し、紅斑が全身に拡大した。その5日後に当院受診、全身倦怠感を訴え、四肢・体幹に丘疹、浮腫性紅斑多発、紅皮状態を呈する。紅斑上に小膿疱多発、眼球結膜充血し上口蓋の発赤を見る。病理組織学的所見や鑑別診断の結果、急性汎発性膿疱性発疹症(AGEP)と診断した。血糖管理をインスリンで行って全内服薬を中止し、輸液で経過を観察したが発熱が継続したため、プレドニゾロン20mg/日開始したところ翌日解熱、皮疹も速やかに消褪した。CRP陰性化によりプレドニゾロンも中止、内服薬のパッチテスト、DLSTは全て陰性であったため、シタグリプチンの内服テストを行い、1錠量で7時間後に両肘窩・前胸部に小膿疱を伴う紅斑が出現したため、本剤によるAGEPと診断した。これまでDPP-4による薬疹の報告はないが、インクレチン関連薬は今後処方量が急増すると考えられているので、注意を喚起するとともに今後の症例の集積が待たれる。

監修者コメント

DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬は糖尿病の治療に大きな変革を与え、今後その使用が急激に拡大するといわれている。本剤の皮膚障害として、使用上の注意には重大な副作用の項に皮膚粘膜眼症候群、剥脱性皮膚炎があらわれることがあること、その他の副作用の項に皮膚及び皮下組織障害があらわれることが記載されており、薬疹の報告にも注意が必要である。

著者(発表者)
金澤典子ほか
所属施設名
製鉄記念広畑病院皮膚科
表題(演題)
膿疱を伴う皮膚疾患(2) <臨床例>―5 DPP-4阻害薬シタグリプチンによる急性汎発性膿疱性発疹症
雑誌名(学会名)
皮膚病診療 34(7) 643-646 (2012.7)

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