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ベバシズマブによる血栓性微小血管障害

2014年10月掲載

薬剤 ベバシズマブ腫瘍用薬
副作用 血栓性微小血管障害
概要 57歳、女性。進行性乳癌に対してベバシズマブを投与し、その約1ヵ月後から蛋白尿と上皮円柱を認めるようになった。その後、血清クレアチニン(Cr)が1.3mg/dLとなったため、投薬が中止され、腎機能悪化が続くため当科を紹介受診、腎生検を実施した。生検時、尿蛋白1.3g/g・Cr、血清Cr1.6mg/dLで血清IgAは430mg/dLと高値を呈していた。組織所見として糸球体係蹄腔の狭小化や基底膜二重化といった血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy:TMA)の特徴に加え、糸球体内皮下にIgAの強い沈着、糸球体内にCD68陽性細胞の浸潤を認めた。臨床経過も合わせてベバシズマブによる腎障害と診断し、薬剤を中止した。血清Crは1.3mg/dLと軽度高値が持続しているが、それ以外は軽快した。

監修者コメント

ベバシズマブ(アバスチン®)はVFGFに対するモノクローナル抗体であり、腫瘍組織の血管新生を抑制するため、進行性の肺癌、大腸癌、乳癌などの治療に用いられている。本症例では、ベバシズマブ投与後に腎障害を呈し、糸球体内皮下にIgA沈着を伴う血栓性微小血管障害(TMA)を認めた。TMAとは、細小動脈や毛細血管に血栓を生じる症候群であり、血管透過性の亢進・血栓形成などを介して臓器障害を含むさまざまな病変が発生する。最近、ベバシズマブの添付文書の「重大な副作用」の項にもTMAが追記されており、TMAによる腎障害にも注意する必要がある。

著者(発表者)
富田真弓ほか
所属施設名
京都市立病院腎臓内科
表題(演題)
糸球体内皮下IgA沈着を伴ったbevacizumabによる血栓性微小血管障害の1例
雑誌名(学会名)
The Japanese Journal of Nephrology:日本腎臓学会誌 56(5) 612-617 (2014.7)

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