せりみっく 今月の症例

ホーム > 新着文献  > エルロチニブによる角膜上皮障害

エルロチニブによる角膜上皮障害

2014年10月掲載

薬剤 エルロチニブ腫瘍用薬
副作用 角膜上皮障害
概要 69歳、女性。EGFR L858R変異陽性の肺腺癌で脳転移を認め、cT1bN0M1b stage4と診断した。エルロチニブで治療を開始したところ、5日目に左下顎に単純ヘルペスを発症し、バラシクロビルで治療した。11日目に視力低下が出現し、両角膜上皮炎、両角膜実質炎と診断された。原因不明の角膜剥離の既往があり、角膜の脆弱性を疑った。エルロチニブの中止により、徐々に角膜上皮混濁は軽快した。次にゲフィチニブを開始したところ、同日午後から右上眼瞼に違和感を認め、視力障害が再燃し、口唇に単純ヘルペスが再燃した。眼科の診察により軽快していた角膜上皮混濁の再燃を認めた。ゲフィチニブ中止後、角膜上皮混濁は徐々に軽快し、現在は3rd lineの化学療法を施行中である。

監修者コメント

エルロチニブならびにゲフィチニブは上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼを選択的に阻害する分子標的治療薬(EGFR-TKI)であり、EGFR遺伝子変異陽性の症例で特に腫瘍縮小効果が高いと報告されている。本症例はstage 4のEGFR遺伝子変異を認める肺腺癌であるが、EGFR-TKIによる治療により角膜上皮障害を発症した。本症例は角膜の脆弱性および単純ヘルペスの関与も考えられるが、EGFR-TKI投与時は角膜上皮増殖抑制作用があることを念頭におき、視力低下などの症状が出た場合には適切な対応を行う必要がある。

著者(発表者)
岩本信一ほか
所属施設名
国立病院機構松江医療センター呼吸器内科
表題(演題)
EGFR-TKI再投与で再燃した角膜上皮障害に単純ヘルペスの関与が疑われた肺腺癌の一例
雑誌名(学会名)
第51回 日本呼吸器学会中国・四国地方会、第53回 日本肺癌学会中国・四国支部会 プログラム・抄録集 112 (2014)
第51回 日本呼吸器学会中国・四国地方会、第53回 日本肺癌学会中国・四国支部会 (2014.7.11-12)

新着文献 一覧

PAGETOP