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ベタメタゾンによる副腎機能不全

2014年9月掲載

薬剤 ベタメタゾン感覚器官用薬
副作用 副腎機能不全
概要 65歳、女性。感冒罹患2週間後から嗅覚障害を自覚し、当科を受診した。嗅粘膜性嗅覚障害と診断し、ベタメタゾン液によるステロイド点鼻療法を開始した。9週間後に、ベタメタゾン液計5本(25mL)を使用したところで、血液検査をしたところ、ACTH、血清コルチゾールが低値であることが判明した。副腎機能不全の疑いで点鼻が中止され、ステロイド漸減の目的でデキサメタゾンの内服が開始された。その2週間後にヒドロコルチゾンに変更し、ACTH、血清コルチゾールの推移から徐々に減量し、3ヵ月でヒドロコルチゾンの内服を中止した。自覚症状の嗅覚障害は改善した。

監修者コメント

嗅覚障害の治療として、ベタメタゾン(リンデロン®)をはじめとするステロイド点鼻療法が行われている。本症例では嗅覚障害に対してベタメタゾンを適正量使用していたにも関わらず、続発性副腎機能不全をきたした。ベタメタゾン点鼻時には適正使用量の投薬を守るとともに、飲まずに吐き出させ、うがいをするという指導を徹底する必要がある。また、近年、感冒罹患後の嗅覚障害の治療薬として当帰芍薬散が注目されているが、ステロイドによる合併症のリスクの高い症例などは当帰芍薬散の内服を考慮すべきである。

著者(発表者)
平澤一浩ほか
所属施設名
東京医科大学耳鼻咽喉科学教室ほか
表題(演題)
嗅覚障害に対するステロイド点鼻により生じた副腎機能不全例
雑誌名(学会名)
耳鼻咽喉科臨床 107(7) 529-533 (2014.7)

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