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ベバシズマブによる心不全

2014年7月掲載

薬剤 ベバシズマブ腫瘍用薬
副作用 心不全
概要 64歳、女性。多発性骨転移を伴う浸潤性乳管癌と診断され、化学療法が開始された。当初、ドセタキセル投与を行うも、腫瘍の増大を認めたため、エピルビシン+シクロホスファミドに薬剤を変更した。腫瘍に対しては治療効果を認めていたが、エピルビシンの累積投与量が605mg/m2に達したため、カペシタビン投与に変更した。しかし、腫瘍マーカーが上昇したためパクリタキセル+ベバシズマブ投与に変更し治療を継続した。左室駆出率に関してはエピルビシン投与が終了した段階で低下のないことを心エコー検査で確認していた。11ヵ月後より5分程度の平地歩行でも息切れが出現するようになり、当科に紹介された。精査の結果抗癌剤による薬剤性心筋障害を原因とする心不全と診断し、ACE阻害剤とβ遮断剤を含む薬物療法で症状は改善した。経過からベバシズマブによる薬剤性心筋障害が疑われた。

監修者コメント

抗VEGFモノクローナル抗体であるベバシズマブ(アバスチン®)は腫瘍血管の新生を抑制することで腫瘍増殖や転移を抑制する効果があり、主に乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、卵巣癌などの治療薬として用いられている。抗癌剤における重篤な合併症として薬剤性心筋障害が報告されている。本症例では、多数の抗癌剤を使用していたため、原因薬剤の特定が困難であったが、経過などからベバシズマブが疑われた。ベバシズマブによる心筋障害の頻度は少ないとされているが、他剤との組み合わせなどでリスクが上昇することも考えられる。心筋障害のリスクがある薬剤を使用している場合には、定期的な心機能や心不全症状のチェックが必要である。

著者(発表者)
佐々木雄志ほか
所属施設名
高知大学医学部附属病院卒後臨床研修センターほか
表題(演題)
乳癌に対する抗癌剤治療中に発症した心不全の一例
雑誌名(学会名)
高知県医師会医学雑誌 19(1) 156-162 (2014.3)

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