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テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、ゲムシタビンによる心筋梗塞

2014年7月掲載

薬剤 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム腫瘍用薬
ゲムシタビン腫瘍用薬
副作用 心筋梗塞
概要 68歳、女性。多発性肝転移を伴う手術不能の進行膵癌に対して、外来でゲムシタビン(GEM)点滴静注とテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1)内服による併用化学療法を行った。8回目のGEMを投与した一週間後に、突然激しい胸痛で救急外来を受診した。心電図でV1からV4でST上昇を認め、亜硝酸剤の舌下スプレーを噴霧するも、胸部症状は持続し、心電図でのST上昇は改善しなかった。急性心筋梗塞の診断で、緊急冠動脈造影検査を行ったところ、左前下行枝近位部に完全閉塞を認めたため、経皮的冠動脈インターベンションを行った。病変部の血栓吸引後に、バルーンで拡張、ベアメタルステントを留置し、再灌流に成功した。

監修者コメント

ゲムシタビン(GEM:ジェムザール®)およびテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(S-1:ティーエスワン®)は代謝拮抗薬であり、手術不能の進行膵癌に対して、GEMとS-1の併用による化学療法が行われている。本症例では多発性肝転移を伴う進行膵癌に対して、GEMとS-1併用による化学療法中に、急性心筋梗塞を発症した。抗癌剤が血栓塞栓症の危険因子であるという報告はあるが、本症例ではGEMおよびS-1により、相乗的に血栓形成の促進や冠動脈プラーク破綻などを来し、急性心筋梗塞を発症した可能性も考えられた。

著者(発表者)
岡田武規ほか
所属施設名
広島赤十字・原爆病院循環器内科
表題(演題)
進行膵癌の化学療法中に急性心筋梗塞を発症した1例
雑誌名(学会名)
心臓 46(4) 511-520 (2014.4)

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