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エベロリムスによる肺障害

2014年7月掲載

薬剤 エベロリムス腫瘍用薬
副作用 肺障害
概要 64歳、女性。右腎臓癌に対し、右腎摘出術を施行後、肺転移が明らかとなり、化学療法としてエベロリムスを使用していた。投与70日経過後に咳嗽が出現し、胸部X線、CTにて周囲にスリガラス陰影を伴う不正な浸潤影を認め、精査目的に当科紹介となった。気管支肺胞洗浄(BAL)と気管支肺胞生検を行ったところ、BAL液ではリンパ球、好酸球分画の上昇、CD4/8比の上昇を認めていた。病理組織では肺胞腔内に多数の肉芽腫が認められ、リンパ球、好酸球浸潤があり、肉芽腫内には多核巨細胞もみられた。薬剤性肺炎を疑い、エベロリムスを中止したところ、症状、胸部X線および検査所見は速やかに改善した。

監修者コメント

エベロリムス(アフィニトール®)はmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害剤であり、腎細胞癌などを適応症として承認されている。本症例では腎細胞癌術後肺転移に対してエベロリムスを投与したところ、顕著な肉芽腫性反応を伴う薬剤性肺障害を発症した。欧米ではmTOR阻害剤使用患者に、2~3割という高い割合で間質性肺障害が発生することが報告されているが、本症例のように肉芽腫を伴った薬剤性肺障害は稀である。また、エベロリムスの休薬により、転移性肺病変は増大する可能性があり、エベロリムスにより惹起された薬剤性肺障害に関しては、継続投与の判断も含めた慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
山口裕礼ほか
所属施設名
聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院呼吸器内科ほか
表題(演題)
顕著な肉芽腫性反応を示したエベロリムスによる肺障害の1例
雑誌名(学会名)
呼吸 33(4) 402-407 (2014.4)

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