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メトホルミンによる乳酸アシドーシス

2014年6月掲載

薬剤 メトホルミンその他の代謝性医薬品
副作用 乳酸アシドーシス、衝心脚気
概要 69歳、男性。アルコール依存症で近医に入院中であった。5ヵ月前に2型糖尿病と診断され、メトホルミン、グリベンクラミドが投与されていた。5日前より嘔気、食欲不振が出現し、発熱、意識障害で搬送された。来院時ショック状態を呈し、アニオンギャップ開大の代謝性アシドーシスを認めた。心エコーで右心系の拡大を認め、造影CTを施行したが、肺動脈主幹部には血栓像は認めなかった。乳酸値の上昇を認め、脚気心を疑いビタミンB1の補充を開始した。来院2時間後にはショックから離脱し、意識レベルもほぼ清明となった。後日ビタミンB1値が正常下限と判明した。

監修者コメント

ビグアナイド薬であるメトホルミン(メトグルコ®)は2型糖尿病の治療薬として頻用されている。重大な副作用として乳酸アシドーシスがあり、血清乳酸値の上昇や血液pHの低下等をきたし、予後不良のことが多い。本症例はアルコール依存症により、潜在的ビタミンB1欠乏症や肝機能障害を認めていたが、メトホルミンの副作用による消化器症状を契機に乳酸アシドーシスと衝心脚気を発症した。乳酸アシドーシスに関しては、メトホルミンの副作用、ビタミンB1欠乏、心原性ショックなどが複合的に関与して発症したと考えられた。メトホルミンの内服中に胃腸症状、倦怠感、筋肉痛、過呼吸などの乳酸アシドーシスの症状が認められた場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
山口普史ほか
所属施設名
徳島県立中央病院内科ほか
表題(演題)
低用量メトホルミン投与中に乳酸アシドーシスと衝心脚気を合併した2型糖尿病の1例
雑誌名(学会名)
糖尿病 57(3) 188-196 (2014.3)

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