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エベロリムスによる薬剤性肺障害

2014年6月掲載

薬剤 エベロリムスその他の代謝性医薬品
副作用 薬剤性肺障害
概要 69歳、男性。1年半前に生体腎移植を施行し、3ヵ月前からエベロリムス(サーティカン®)の内服を開始した。呼吸困難と胸部単純CTにて上葉中心の斑状のすりガラス陰影を認め、精査目的で当科紹介となった。酸素分圧の低下を認め、CRPおよびβ-Dグルカンは陰性であったが、KL-6は1,187U/mLと上昇していた。気管支肺胞洗浄液ではマクロファージ43.6%、リンパ球54.0%とリンパ球分画の増加があり、経気管支肺生検では肺胞腔内の肉芽組織の形成と器質化を認めた。経過よりエベロリムス(サーティカン®)による薬剤性肺障害と診断して内服を中止したところ、臨床症状と画像所見の改善を認めた。

監修者コメント

mTOR阻害剤であるエベロリムス(サーティカン®)は代謝拮抗剤に分類される新規免疫抑制剤である。エベロリムスとしては、進行性腎細胞癌に対する分子標的治療薬としてアフィニトール®(10mg)が承認されているが、今回使用されたサーティカン®は、常用量1.5-3 mg/日の低用量投与で免疫抑制薬として承認されている。アフィニトール®は肺障害を高率に認めたとの報告があるが、本症例のように腎移植後の免疫抑制剤として低用量で使用するサーティカン®における薬剤性肺障害の報告は稀である。サーティカン®は臓器移植後の免疫抑制剤として重要な薬剤であり、今後使用頻度が増えることが予想される。本薬剤の投与時は薬剤性肺障害を生じる可能性があることを念頭におく必要がある。

著者(発表者)
 武田倫子ほか
所属施設名
大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器内科学ほか
表題(演題)
エベロリムス(サーティカン)による薬剤性肺障害の1例
雑誌名(学会名)
日本呼吸器学会誌 3(2) 227-231 (2014.3)

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