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アセチルシステインによる薬剤性肺障害

2014年6月掲載

薬剤 アセチルシステイン呼吸器官用薬
副作用 薬剤性肺障害
概要 68歳、男性。特発性肺線維症(IPF)に対し、ムコフィリン(アセチルシステイン)の吸入を開始した。開始10日後より発熱、鼻汁、スリガラス影が出現した。検査所見ではKL-6:904/mL、CRP:8.4mg/dLと上昇し、低酸素血症を認めた。IPFの急性増悪を疑いステロイドパルス療法を行うもIPFとしては治療反応性が良好であり、薬剤性肺障害が鑑別に上がった。アセチルシステインの再投与を行ったところ、再投与後に発熱、鼻汁、スリガラス影が出現し、休薬のみで発熱と陰影は改善した。薬剤リンパ球刺激試験においてアセチルシステインのみが陽性であった。以上よりアセチルシステインの薬剤性肺障害と診断した。

監修者コメント

N-アセチルシステイン(NAC)は抗酸化作用を示すアミノ酸の一つである。海外ではNACの内服は特発性肺線維症(IPF)に有効であるという報告が散見されるが、我が国では承認されておらず、主に臨床試験などで投与されている。NACは副作用が少なく、IPFにも比較的安全に使用することができるが、本症例ではNAC投与による薬剤性肺障害を認めた。有効な薬物療法の選択肢が少ないIPF症例において、安全性が高いNACの吸入が今後もさらに増加すると考えられるが、稀な副作用として薬剤性肺障害があることに注意すべきである。

著者(発表者)
奥田良ほか
所属施設名
さいたま赤十字病院呼吸器内科
表題(演題)
再投与にて診断したN-アセチルシステイン吸入による薬剤性肺障害の1例
雑誌名(学会名)
日本呼吸器学会誌 3(2) 300-303 (2014.3)

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