アデホビルピボキシルによる骨軟化症
2014年5月掲載
薬剤 | アデホビルピボキシル化学療法剤 |
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副作用 | 骨軟化症 |
概要 | 42歳、男性。5年前より慢性活動性B型肝炎に対し、肝炎ウイルス治療薬アデホビルピボキシルを内服中であった。当科初診9ヵ月前から両膝痛、両足関節痛、腰背部痛が出現した。膠原病や神経筋疾患などを疑われ、精査されたが原因不明であり当科紹介となった。薬物療法や硬膜外ブロックなどでは痛みの軽減なく、入院加療を行った。その際、頸椎棘突起骨折を認めた。血液検査ではアルカリフォスファターゼの上昇、血清リンの低下、腎機能障害を認めた。リンとビタミンDの補充療法を行ったが、症状は不変であった。精査の結果、Fanconi症候群による低リン血症とそれに伴う骨軟化症が疑われた。Fanconi症候群の原因としてアデホビルピボキシルが疑われたため、休薬したところ著明な痛みの改善と骨塩量の上昇を認めた。 |
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本文献では、B型肝炎の治療薬であるアデホビルピボキシル(ヘプセラ®)によるFanconi症候群とそれに伴う続発性低リン性骨軟化症が疑われた稀な1例を報告している。骨軟化症は、活性型ビタミンDの低下や低リン血症により骨石灰化障害を起こし、骨脆弱性をきたす病態である。本症例における骨軟化症の原因としては、Fanconi症候群による腎尿細管の広範な障害に伴いリンの再吸収が低下したことが考えられた。アデホビルピボキシルは原則として長期投与を要するため、今後もFanconi症候群による低リン血症性骨軟化症が増加することが考えられる。本薬剤の投与中に関節痛などの症状が認められた場合は、腎機能とリンの定期的な観察が必要である。
- 著者(発表者)
- 上村裕平ほか
- 所属施設名
- 佐賀大学医学部麻酔・蘇生学ほか
- 表題(演題)
- 慢性B型肝炎治療薬adefovirにより生じた薬剤性骨軟化症による全身痛の1例
- 雑誌名(学会名)
- The Journal of Japan Society of Pain Clinicians 21(1) 45-49 (2014.2)
第45回 日本ペインクリニック学会 (2011.7)
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