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硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)による直腸壊死、腹膜炎、フルニエ症候群

2014年4月掲載

薬剤 硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)泌尿生殖器官及び肛門用薬
副作用 直腸壊死、腹膜炎、フルニエ症候群
概要 83歳、女性。直腸脱の診断でGant-三輪・Thierschの手術を受けた。結紮間の粘膜固有層にALTA療法として硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液を注入された。術後25日目から食欲低下、嘔吐、下痢が続き、意識レベルが低下し、当院紹介入院となった。直腸壁が壊死してできた直腸周囲膿瘍が腹腔内に穿通し、汎発性腹膜炎を起こしていた。仙骨大腿部にはフルニエ症候群が認められた。S状結腸人工肛門造設術、腹腔内ドレナージ術と壊死組織切除を施行した。術後DICや呼吸不全を起こし、長期間の治療を要した。入院8ヵ月後に創の治癒を確認し、人工肛門を閉鎖した。その2ヵ月後に退院したが、直腸狭窄や肛門機能障害は認められていない。

監修者コメント

硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸注射液(ALTA)を用いた内痔核の治療法では、ALTAを内痔核に局注することで、痔核への血流を遮断して痔核容積を縮小させ、痔核間質の持続性の炎症反応により粘膜や粘膜下層の癒着、固定、硬化、退縮を図る。ALTAは痔核や直腸脱の新しい治療薬として広く使用されるようになり、良好な治療成績が報告されている一方で、投与部位の硬結、発赤、出血、より重篤な直腸潰瘍や直腸狭窄などの副作用も散見されている。本症例では、直腸脱に対するALTA療法後に直腸壊死、汎発性腹膜炎、フルニエ症候群(壊疽性筋膜炎)を起こしてショック状態となった。本症例は手術で救命しえたが、筋層内に浸透したALTAが直腸壊死を起こした可能性が高い。ALTAを使用する際には、重篤な合併症を起こす可能性があることを十分認識し、適切な医療を行うことが重要である。

著者(発表者)
都築英雄ほか
所属施設名
土佐市民病院外科
表題(演題)
ALTA療法後の直腸壊死・汎発性腹膜炎・フルニエ症候群の1救命例
雑誌名(学会名)
四国医学雑誌 69(5-6) 269-272 (2013.12)

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