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アテゾリズマブによる髄軟膜炎

2023年5月掲載

薬剤 アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 髄軟膜炎
概要 73歳、女性。X年5月に右上腹部痛を自覚するようになったことを契機に、非B非C肝硬変を背景とした切除不能な多発肝細胞癌(HCC)と診断され、X年6月9日よりAtezolizumab+Bevacizumab(Atezo+Beva)療法を導入した。2サイクル施行後には一部腫瘍血流の低下があり治療効果を認めていた。同年7月26日に3サイクル目の投与を行った翌日から指先に力が入らなくなり、7月31日には発熱があり体動困難となったため同日当院を受診した。髄膜刺激徴候は認めないが、見当識障害を認めたため精査加療目的に同日緊急入院した。第2病日に髄液検査を施行し、無菌性髄膜炎の所見であった。その後も意識障害の増悪傾向から第3病日に施行した頭部造影MRI検査では、造影FLAIRで両側大脳脳表や脳溝に沿って増強効果があり髄軟膜炎が示唆された。Atezoによる免疫関連有害事象(irAE)としての髄軟膜炎の診断で、同日からプレドニゾロンで治療を開始した。第4病日には解熱し、意識清明となった。ステロイド治療に対する反応性が良好であったためプレドニゾロン減量を進めた。第11病日に施行した頭部造影MRI検査でも脳表や脳溝に認めていた増強効果は消失しており、第14病日には退院した。退院後はHCCに対する治療変更として、X年8月29日からLenvatinibを開始した。

監修者コメント

抗PD-L1モノクローナル抗体製剤であるAtezoは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)として肺癌などの治療に用いられている。本症例は、HCCに対するAtezo+Beva療法中にirAE髄軟膜炎を発症した1例である。ICIによるirAEがしばしば問題となるが、髄軟膜炎の頻度は稀であり、特にHCCに対するAtezoの投与ではこれまでに報告がない。HCC治療においてAtezoの使用が増加しているが、投与中に意識障害などの症状を認めた場合は、irAE髄軟膜炎も念頭に置き、適切な検査や治療を行うべきである。

著者(発表者)
村石望ほか
所属施設名
富山大学附属病院第三内科
表題(演題)
肝細胞癌に対するAtezolizumab+Bevacizumab療法中のirAE髄軟膜炎の1例
雑誌名(学会名)
第27回日本肝がん分子標的治療研究会プログラム・抄録集 129 (2023)
第27回 日本肝がん分子標的治療研究会(2023.1.13-14)

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