アジスロマイシンによる偽膜性食道炎
2023年5月掲載
薬剤 | アジスロマイシン抗生物質製剤 |
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副作用 | 偽膜性食道炎 |
概要 | 70歳代、女性。血液透析で通院中、急性気管支炎を発症し、アジスロマイシンを3日間投与された。約1週間後から固形物の食道つかえ感が出現したため、精査加療目的で当院を紹介された。なお、発熱、腹痛、下痢はみられなかった。 上部消化管内視鏡検査では、下部食道に発赤、びらん、および黄白色調半球状隆起が多発し、狭窄を認めた。また、食道裂孔ヘルニアを伴っていた。さらに胃角小弯に潰瘍、十二指腸下行部にびらんを認めた。背景胃粘膜は萎縮性胃炎であった。食道からの生検では、肉芽組織で好中球を主体とした強い炎症細胞浸潤がみられ、フィブリンおよび炎症性滲出物による偽膜を認めた。 ボノプラザンを検査当日から開始し、2週間後には食道つかえ感が消失した。7週間後には下部食道の黄白色調半球状隆起は消失し、狭窄の改善がみられた。また、胃潰瘍は瘢痕化し、十二指腸下行部のびらんも改善していた。 |
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マクロライド系の抗生物質であるアジスロマイシンは急性気管支炎や肺炎をはじめとする感染症の治療に広く使用されている。本症例はアジスロマイシンの服用後に発症した偽膜性食道炎(pseudomembranous esophagitis: PME)の1例である。PMEは比較的稀な疾患であり、内視鏡的には食道が炎症性滲出物や壊死物質からなる黄色調あるいは黒色調の膜に被覆されていることが特徴とされている。本薬剤の投与中に食道のつかえ感などを認めた際には、稀ではあるがPMEも考慮し、上部消化管内視鏡検査などの検査を行うべきである。
- 著者(発表者)
- 草野昌男ほか
- 所属施設名
- いわき市医療センター消化器内科
- 表題(演題)
- アジスロマイシン服用後に発症した偽膜性食道炎の1例
- 雑誌名(学会名)
- Progress of Digestive Endoscopy 101(1) 39-41 (2022)
第114回 日本消化器内視鏡学会関東支部例会(2022.6.11-12)
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