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ナプロキセンによる無菌性髄膜炎

2023年4月掲載

薬剤 ナプロキセン中枢神経用薬
副作用 無菌性髄膜炎
概要 33歳、女性。既往として24歳時、不明熱の指摘があり市中病院にてナプロキセン頓服処方で加療中。X年2月肩こりの増悪を認めナプロキセン内服するも、頭部全体の非拍動性頭痛が緩徐に悪化。数日経過で意識障害、悪心、嘔吐を認め救急受診。神経学的には変動する意識障害、jolt accentuationを認めた。血液検査で白血球11.7×103/μL、CRP21.13mg/dLと高度炎症反応、脳脊髄液検査では細胞数936/μL多型核球優位の増多、蛋白442mg/dLと高値を認めた。頭部MRIではFLAIR画像で大脳を中心とし脳溝に沿った高信号、Gd造影で軟膜主体に増強効果を認めた。当初、細菌性髄膜炎も含めた感染性機序を考慮し抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬などで加療を行い、ナプロキセンは中止とした。第3病日には臨床症状は著明に改善した。髄液培養、髄液中各種ウイルスDNA、真菌感染マーカーは陰性、血清学的に膠原病、サルコイドーシス、Behcet病などの自己免疫疾患も否定的であった。発症前にナプロキセン内服しており、内服中止後に臨床徴候の著明な改善を認めたため、ナプロキセン誘発性無菌性髄膜炎と診断した。

監修者コメント

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は解熱、鎮痛、抗炎症作用を目的に日常診療において広く使用されている。本症例はNSAIDsであるナプロキセンにより無菌性髄膜炎を発症した1例である。NSAIDsにより無菌性髄膜炎を発症した症例はこれまでにも報告されているが、ナプロキセンによるものは稀である。使用中に意識障害などを認めた際には、無菌性髄膜炎の可能性も考慮し、適切な処置を行うことが重要である。

著者(発表者)
岩岡和博ほか
所属施設名
岩手医科大学内科学講座脳神経内科老年科分野
表題(演題)
ナプロキセン誘発性無菌性髄膜炎の1例
雑誌名(学会名)
神経治療学 39(6) S283 (2022)
第40回 日本神経治療学会学術集会 (2022.11.2-4)

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