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テガフール・ウラシルによる脂肪肝

2023年3月掲載

薬剤 テガフール・ウラシル腫瘍用薬
副作用 脂肪肝
概要 【症例1】55歳、女性。健診発見の部分充実型結節に対して、右下葉切除術を施行した。病理組織診断の結果、肺腺癌のためテガフール・ウラシル配合剤(UFT)400mg/日の内服を開始した。術前の肝CT値/脾CT値比(肝脾率)は1.18(脂肪肝の診断基準は0.85未満)であったが、術後1年目の肝脾率は0.52と低下し、脂肪肝と診断した。術後1年3ヵ月目に皮疹が出現したため200mg/日に減量し、術後2年目の肝脾率は0.93と改善した。経過中に肝機能異常を認めず、2年間の内服を完遂した。
【症例2】65歳、女性。喀血を主訴に精査した結果、左上葉肺腺癌の診断で左上大区域+S6合併部分切除術を施行した。病理組織診断の結果、肺腺癌のため、UFT400mg/日の内服を開始した。術前より肝脾率は0.77と脂肪肝を認めていたが、術後1年目の肝脾率は0.33と低下し肝への脂肪沈着の進行を認めた。軽度のAST値、ALT値上昇を認めたため300mg/日に減量し、術後2年目の肝脾率は0.63と改善した。2年間の内服を完遂した。

監修者コメント

UFTは肺癌や胃癌、大腸癌などの治療薬として用いられている代謝拮抗剤である。本文献ではUFTの内服により脂肪肝を発症した2症例を報告している。UFTの添付文書では脂肪肝を発症する頻度は0.1%未満とされ、稀な副作用である。脂肪肝から肝炎や肝硬変への進行には注意すべきであるが、UFTの減量により脂肪肝は改善するため、脂肪肝単独の副作用はUFTを中止する理由にはならないと考えられる。

著者(発表者)
岡田諭志ほか
所属施設名
淀川キリスト教病院呼吸器外科ほか
表題(演題)
テガフール・ウラシル配合剤により脂肪肝を認めた2例
雑誌名(学会名)
肺癌 62(6) 780 (2022)
第63回 日本肺癌学会学術集会(2022.12.1-3)

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