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アテゾリズマブによる抗リカバリン抗体陽性網膜症

2023年3月掲載

薬剤 アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 抗リカバリン抗体陽性網膜症
概要 86歳、男性。20XX-1年10月に進展型小細胞肺癌と診断し、11月よりカルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブによる1次治療を開始した。肺癌病変は縮小し抗腫瘍効果を認めたが、4コース目が終了した20XX年2月初めより両眼の急速な視力低下が出現した。眼底検査では両眼底に硝子体混濁を認めた。視野検査では視野狭窄以外に右で中心暗点、左で傍中心暗点を認めた。また、網膜電図でa波とb波の平坦化、光干渉断層計(OCT)ではellipsoid zone(視細胞の構造を反映)の消失を認めた。眼科精査で癌関連網膜症(CAR)が疑われたため、入院当日よりメチルプレドニゾロンパルス療法を行い、後療法としてプレドニゾロンを開始した。十分な効果を認めず、day 12より再度パルス療法を行った。また、関与が疑われたアテゾリズマブを中止した。以後は徐々に視力が回復したためプレドニゾロンを漸減し、day 26に軽快退院した。入院時に提出した血清抗リカバリン抗体が1,600titer以上(基準値50titer未満)と強陽性であることが判明し、CARと臨床診断した。退院時の視力は右が0.01、左が0.4まで回復し、day 64にはOCTでellipsoid zoneの菲薄化も改善した。4月下旬に肺癌の再発を認めたが、本人の希望で最善の支持療法の方針となった。

監修者コメント

抗PD-L1モノクローナル抗体であるアテゾリズマブは、免疫チェックポイント阻害薬として肺癌などの治療に用いられている。本症例は抗PD-L1抗体による免疫関連有害事象(irAE)として抗リカバリン抗体陽性の網膜症を発症したと考えられた1例である。本薬剤の投与中に視力低下などの症状を認めた際には、稀ではあるが本有害事象も念頭におき、適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
窪田幸司ほか
所属施設名
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科呼吸器内科学ほか
表題(演題)
アテゾリズマブ投与後に抗リカバリン抗体陽性の網膜症を発症した小細胞肺癌の1例
雑誌名(学会名)
日本呼吸器学会誌 11(6) 345-349 (2022)

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