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ブロルシズマブによる高眼圧、眼内炎症

2023年1月掲載

薬剤 ブロルシズマブ感覚器官用薬
副作用 高眼圧、眼内炎症
概要 53歳、男性。両高眼圧としてカルテオロール点眼により加療されていた(無治療時眼圧は21~23mmHg)。前医にて2017年3月に左眼中心性漿液性脈絡網膜症として網膜光凝固術を施行された。同年10月に左眼滲出型加齢黄斑変性(nAMD)と診断され、以後2020年5月までに計10回のアフリベルセプト硝子体内注射が施行された。2020年9月に滲出性変化の再発が見られたためブロルシズマブ硝子体内投与に変更し、同年12月の2回目の投与翌日に左眼圧29mmHg、軽度の前房内細胞を認めた。アセタゾラミドの内服が開始されたが、投与後5日目には53mmHgの著明な高眼圧、硝子体内に細胞が見られ、角膜浮腫と左眼霧視の訴えを認めた。アセタゾラミド内服の増量、ベタメタゾン点眼およびチモロール点眼が開始され、投与後7日目に当院を紹介受診した。
蛍光眼底造影検査で網膜血管炎などの眼底所見は見られなかった。臨床経過と眼所見からブロルシズマブ投与後の眼内炎症と診断し、同日にトリアムシノロンアセトニドを左眼にTenon嚢下投与したところ、その翌日には霧視の症状は改善し左眼圧は20mmHgに下降した。左眼の角膜浮腫は消失し、前房および硝子体の細胞数は減少した。その後はプレドニゾロン内服を開始し、左眼圧は16~18mmHgを推移して前房および硝子体の細胞は消失した。

監修者コメント

血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬であるブロルシズマブは滲出型加齢黄斑変性に対する比較的新しい治療薬である。本症例は、ブロルシズマブの硝子体内注射後に著明な高眼圧を伴う眼内炎症を生じた1例である。本薬剤の副作用として眼内炎症などが報告されているが、高眼圧は比較的稀である。緑内障および高眼圧症眼に対してブロルシズマブを投与する際には、頻度は少ないものの重篤な副作用として高眼圧も念頭におくべきである。

著者(発表者)
竹本大輔ほか
所属施設名
金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学ほか
表題(演題)
ブロルシズマブ硝子体内注射後に著明な高眼圧を伴う眼内炎症を生じた1例
雑誌名(学会名)
眼薬理 36(1) 35-38 (2022)

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