クロザピンによる肺障害
2022年10月掲載
薬剤 | クロザピン中枢神経用薬 |
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副作用 | 肺障害 |
概要 | 49歳、男性。28年前に統合失調症の診断を受け、加療中であった。約1ヵ月前から遅発性の頚部ジストニアの改善目的に前医へ入院し、クロザピンが導入された。導入後は精神症状やジストニア症状は改善したものの6日前から発熱症状があり、CT検査で呼吸不全を伴う両側肺陰影を確認したため肺炎として抗菌薬投与を開始したが、改善なく当院へ紹介された。画像所見では両側の肺水腫様の所見を認めた。心臓超音波検査では心不全の所見は得られず、経過からクロザピンによる薬剤性肺障害を疑い投与を中止した。第2病日に気管支肺胞洗浄を行い、非血性の気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収し、BALFの細胞診ではヘモジデリン貪食像はなく好中球分画が33.0%と上昇していた。プレドニゾロンの投与を開始し、第8病日までに速やかに改善したため、プレドニゾロンの投与は終了し、再燃なく経過した。 |
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クロザピンは治療抵抗性統合失調症の治療に用いられている薬剤である。本症例は、クロザピンの投与により薬剤性肺障害を発症した稀な1例である。本薬剤の重篤な副作用としては、無顆粒球症、心筋炎、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡などが知られているが、薬剤性肺障害の報告は少ない。本薬剤の投与中に呼吸障害などの症状を認めた際には、頻度は少ないものの薬剤性肺障害も念頭に置き、適切な処置を行うことが重要である。
- 著者(発表者)
- 鈴木利央登
- 所属施設名
- 岩手医科大学附属病院高度救命救急センター
- 表題(演題)
- 治療抵抗性統合失調症患者に発症したクロザピンによる薬剤性肺障害の1例
- 雑誌名(学会名)
- 気管支学 44(増) S300 (2022)
第45回 日本呼吸器内視鏡学会学術集会(2022.5.27-28)
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