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フィナステリドによる奇異性脳塞栓症

2022年10月掲載

薬剤 フィナステリドホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 奇異性脳塞栓症
概要 46歳、男性。X-4年に複視が出現し精査され、左小脳の白質病変を認めたため多発性硬化症を疑われていた。X年某日、視点が合わない、右上肢の失調、歩行時のふらつきを認めたため受診。脳神経系、筋骨格系の異常なく、右手の測定障害と体幹失調を認めた。頭部造影MRIで拡散強調像にて、右小脳虫部から半球にかけて高信号を認め急性期脳梗塞と診断し入院。抗凝固薬を点滴し精査を進めた。αガラクトシダーゼA活性の異常は指摘されず、ホルター心電図で不整脈はなく、頸動脈エコーでも異常はなかったが、経食道エコーでmicro bubbleテスト陽性だった。奇異性脳塞栓症とみて治療を継続し、リハビリテーションで症状改善し退院となった。発症の数ヵ月前から発毛促進薬としてミノキシジル10mg、フィナステリド1mgを内服しており、この血栓傾向が影響し、さらに卵円孔開存でemboliを起こしたと考えられた。

監修者コメント

男性型脱毛症の治療薬であるフィナステリドの内服が原因と考えられた奇異性脳塞栓症の1例である。奇異性脳塞栓症とは、下肢などの深部静脈で発生した血栓が静脈内を移動し、脳動脈に到達して発症する脳梗塞のことである。稀ではあるが、同薬剤の使用中に脳卒中を発症したという症例は他にも報告されており、注意が必要である。

著者(発表者)
藤原里紗ほか
所属施設名
神戸市立医療センター西市民病院
表題(演題)
若年男性に発症した奇異性脳塞栓症で、血栓の原因が発毛促進薬フィナステリドの内服と考えられた一例
雑誌名(学会名)
日本神経学会第121回近畿地方会プログラム・抄録集 28 (2022)
第121回 日本神経学会近畿地方会(2022.3.6)

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