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ギルテリチニブによる視床下部性副腎皮質機能低下症、成人成長ホルモン分泌不全症、視床下部性性腺機能低下症、高血糖

2022年10月掲載

薬剤 ギルテリチニブ腫瘍用薬
副作用 視床下部性副腎皮質機能低下症、成人成長ホルモン分泌不全症、視床下部性性腺機能低下症、高血糖
概要 54歳、女性。急性骨髄性白血病(AML)と診断され、寛解導入療法および地固め療法後、FLT3阻害剤ギルテリチニブによる2ヵ月間の治療が行われた。X-2月に投与終了し、X月に全身倦怠感、体重減少、低Na血症が出現。ACTH、コルチゾール、IGF-1、LH、FSHの低下を認めた。CRH負荷試験にて視床下部性副腎皮質機能低下症と判断し、ヒドロコルチゾンを開始した。GHRP2負荷試験で重症成人成長ホルモン分泌不全症と判断し、LHRH負荷試験では反応遅延を認め視床下部性性腺機能低下症を疑った。また、ギルテリチニブ投与前後でHbA1c値の悪化があり、メトホルミンを増量した。X+3月時点で続発性副腎皮質機能低下症は改善がなかったが、IGF-1基礎値は改善し、GHRP2負荷試験、アルギニン負荷試験でも成長ホルモン分泌不全症は自然軽快していた。また、LHRH負荷試験は反応遅延のままであったが、LH、FSH基礎値の改善を認めた。血糖コントロールも、AML再発後の入院下でも改善した。

監修者コメント

ギルテリチニブは、FLT3遺伝子変異陽性AMLに対する新規治療薬である。本症例は、ギルテリチニブの投与により、内分泌障害および高血糖を発症した稀な1例である。本薬剤による血糖コントロールの増悪は報告されているが、続発性副腎皮質機能低下症や重症成人成長ホルモン分泌不全症の報告はない。本薬剤の投与中に倦怠感や体重減少、電解質異常などを認めた際には、内分泌障害も疑い、適切な処置を行うことが重要である。

著者(発表者)
植本優里ほか
所属施設名
産業医科大学第1内科学講座
表題(演題)
抗悪性腫瘍剤(FLT3阻害剤)投与後に発症した内分泌障害および高血糖の休薬後経過を確認した一例
雑誌名(学会名)
日本内分泌学会雑誌 98(1) 255 (2022)
第95回 日本内分泌学会学術総会(2022.6.2-7.31)

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