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ヘパリンナトリウムによるヘパリン起因性血小板減少症

2014年3月掲載

薬剤 ヘパリンナトリウム血液・体液用薬
副作用 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
概要 58歳、男性。慢性糸球体腎炎による末期腎不全のため血液透析導入となり、以後維持透析を受けていた。抗凝固剤は導入時よりヘパリンナトリウムが使用されていた。導入後15年目から好酸球増多症が出現し、その9ヵ月頃からダイアライザーと透析回路内に残血を認めるようになった。その後、透析開始直後に一過性の胸部不快感と血圧低下が出現するようになった。アスピリン服用により残血とショックは消失したが、掻痒感が出現したためアスピリンを中止したところ、再び透析時の残血とショックが出現した。透析後の著明な血小板減少に加え、ヘパリン・PF4複合体抗体(HIT抗体)が陽性を呈したことから、II型のヘパリン起因性血小板減少症と診断した。抗凝固薬をメシル酸ナファモスタットに変更した後は、透析中の凝血、血小板減少およびショックは軽快し、好酸球増多症も軽減した。

監修者コメント

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は抗凝固薬であるヘパリンナトリウムの重大な副作用の一つであり、従来の出血性合併症とは相反する血栓性合併症として注目されている。本症例では好酸球増多症がHIT発症に先行しており、アレルギー機序の関与も疑われた。また、HITの症状に対してアスピリンが奏功したことも非常に示唆に富む症例といえる。透析患者のHITはほとんどが導入時に発症するが、本症例のように15年目に初発し、さらに好酸球増多症を伴う透析中のショック症状を認める症例もあるため、透析導入後長期間が経過していてもHITに留意する必要がある。

著者(発表者)
鍵谷聡志ほか
所属施設名
富山大学医学部第二内科ほか
表題(演題)
長期維持透析患者に発症したヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の稀有な1例
雑誌名(学会名)
日本透析医学会雑誌 46(12) 1169-1173 (2013.12)

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