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テポチニブによる多発血管炎性肉芽腫症

2022年9月掲載

薬剤 テポチニブ腫瘍用薬
副作用 多発血管炎性肉芽腫症
概要 62 歳、男性。MET陽性肺腺癌に対し、20XX年10月からテポチニブを内服し、原発巣は縮小傾向であった。翌年2月から発熱と肝腎機能障害によりテポチニブを休薬したが軽快しなかった。胸部CTで左下葉にコンソリデーション、両肺に新規の多発結節影を認め、精査目的で入院した。気管支鏡検査にて左下葉は器質化像を認め、薬剤性間質性肺炎としてステロイド治療を行い改善したが、両肺多発結節影は残存あり、同年3月CTガイド下針生検を実施した。病理検査上、悪性所見を認めず、組織球の集簇を伴う壊死性肉芽腫性炎症を認め、血液検査でPR3-ANCA陽転化を認め、多発血管炎性肉芽腫症と診断した。テポチニブは休薬のまま、ステロイド内服を漸減し、多発結節影は改善傾向にある。

監修者コメント

チロシンキナーゼ阻害薬であるテポチ二ブは、MET遺伝子変異陽性の肺癌の治療に用いられている。本症例は、テポチ二ブの投与により多発血管炎性肉芽腫症を合併した1例である。多発血管炎性肉芽腫症は上・下気道・肺の肉芽腫性炎症と腎の壊死性糸球体腎炎を来す抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)関連血管炎である。薬剤性ANCA関連血管炎の原因として、プロピルチオウラシル、ヒドララジン、ミノサイクリンなどがあるが、MET阻害薬による報告はなく、またMET陽性肺癌に多発血管炎性肉芽腫症を合併する報告も稀であり、貴重な症例といえる。

著者(発表者)
渡辺安奈ほか
所属施設名
川崎医科大学附属病院呼吸器内科ほか
表題(演題)
MET陽性肺癌に対しテポチニブ治療中に多発血管炎性肉芽腫症を合併した一例
雑誌名(学会名)
第65回日本呼吸器学会中国・四国地方会プログラム・抄録集(Web)/第30回日本呼吸器内視鏡学会中国四国支部会(プログラムなし)/第72回日本結核・非結核性抗酸菌症学会中国四国支部会(プログラムなし) R-75 (2021)
第65回 日本呼吸器学会中国・四国地方会 第30回 日本呼吸器内視鏡学会中国四国支部会 第72回 日本結核・非結核性抗酸菌症学会中国四国支部会(2021.12.4-5)

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