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ロキサデュスタットによる中枢性甲状腺機能低下症

2022年9月掲載

薬剤 ロキサデュスタットその他の代謝性医薬品
副作用 中枢性甲状腺機能低下症
概要 71歳、男性。慢性糸球体腎炎による慢性腎不全に対し維持透析中で、16ヵ月前から腎性貧血に対しロキサデュスタット(Rox)が開始されていた。2ヵ月前から原因不明の黄疸が出現。今回、右小脳、右側頭葉、両側後頭葉に多発性ラクナ梗塞を発症し、当科初診となった。
脳梗塞治療を行いながら黄疸の精査中、TSH <0.005μIU/L、fT3 0.97pg/mL、fT4 0.12 ng/dLと中枢性甲状腺機能低下が判明した。TRH負荷試験でTSH、T4の反応は著しく障害されていた一方、TSH以外の下垂体ホルモンは全て正常範囲内で、PRLの上昇は見られなかった。さらにトルコ鞍MRIでは下垂体、下垂体茎、視床下部に異常所見は指摘されなかった。Roxをダルベポエチンに変更したところ、約1ヵ月後にTSH、fT4は正常化した。

監修者コメント

経口の腎性貧血治療薬であるRoxにより中枢性甲状腺機能低下症を発症した1例である。これまでの研究により、Roxが甲状腺ホルモン受容体、特にTRβに結合能を有し、活性化することが報告されている。本症例の中枢性甲状腺機能低下は、Roxによる視床下部-下垂体へのネガティブフィードバック亢進が原因と考えられている。Roxの投与に起因する中枢性甲状腺機能低下症は稀であり、あまり認知されていないが、投与する際には甲状腺機能の確認が必要であろう。

著者(発表者)
崎原哲ほか
所属施設名
青森労災病院糖尿病・内分泌内科ほか
表題(演題)
腎性貧血治療薬Roxadustatにより中枢性甲状腺機能低下症を来したと考えられる1例
雑誌名(学会名)
日本内科学会東北地方会会誌 34(1) 49 (2022)
第225回 日本内科学会東北地方会(2022.2.19)

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