エゼチミブによる急性尿細管間質性腎炎
2022年9月掲載
薬剤 | エゼチミブ循環器官用剤 |
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副作用 | 急性尿細管間質性腎炎 |
概要 | 75歳、女性。高脂血症のためA診療所を定期通院し、エゼチミブ(内服、10mg/日)を処方されていた。腎機能障害は指摘されていなかった。X-1年12月末から心窩部痛・胃部不快感を自覚し、治療を受けたが改善なく腎機能障害が出現。増悪したため当科を紹介受診した。 入院日よりエゼチミブ内服を中止した。腎生検を施行し、尿細管間質領域に著明な細胞浸潤を認め、急性尿細管間質性腎炎(ATIN)と診断した。自己免疫疾患や腎尿路形態異常は認めず、唯一内服していたエゼチミブに対する薬剤リンパ球刺激試験(DLST)を行い、エゼチミブによるATINと診断した。第5病日からプレドニゾロン(PSL)で治療を開始した。クレアチニン(Cr)は2.5 mg/dLをピークに減少し、第12病日に1.6 mg/dLとなったため、第13病日に退院した。以後、外来で経過をみながらPSLを徐々に漸減した。X+1年2月下旬でCr 1.1 mg/dLまで改善したため、PSLの投与を中止とした。 |
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小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であり、高脂血症の治療に用いられているエゼチミブによりAITNを発症した1例である。近年、腎機能障害で発見される薬剤性ATINが注目されているが、これまでにエゼチミブによるATINの報告はなく、稀な症例といえる。ATINは様々な薬剤によって発症する可能性があり、薬剤の投与中に急性腎障害を認めた際には、長期内服薬であっても薬剤性ATINを鑑別する必要がある。
- 著者(発表者)
- 加藤里絵ほか
- 所属施設名
- 松山赤十字病院臨床研修センターほか
- 表題(演題)
- 今月の症例 エゼチミブによる急性尿細管間質性腎炎を呈した1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本内科学会雑誌 111(3) 594-598 (2022)
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