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ミコフェノール酸モフェチルによるリンパ増殖性疾患、小腸穿孔

2022年8月掲載

薬剤 ミコフェノール酸モフェチルその他の代謝性医薬品
副作用 リンパ増殖性疾患、小腸穿孔
概要 79歳、女性。小児喘息の既往がある。6年前に近医で滲出性中耳炎(以下OME)と上咽頭の潰瘍性病変を指摘され、4年前に当科紹介となった。検査結果より多発血管炎性肉芽腫症と診断し、グルココルチコイドに免疫抑制剤を併用し寛解導入療法を行ったが、有害事象で継続できずOMEを繰り返していた。
1年前にミコフェノール酸モフェチル(以下MMF)を導入したところ、OMEは再燃せず寛解が維持された。3ヵ月前に撮像したPET-CTにて小腸にのみ複数のFDG集積像を認めた。横行結腸ポリープ切除後に回腸穿孔を合併したが、小腸部分切除と洗浄ドレナージにて状態は改善し退院した。切除検体の病理で、CD20陽性B細胞(EBER陽性)のモノクローナルな増殖と肉芽腫性病変を認めた。また末梢血中のEBウイルス(以下EBV)PCRが陽性で、リンパ球数は410/μLに低下していた。MMFを休薬後、末梢血中のリンパ球数は回復し、小腸多発潰瘍の瘢痕化・末梢血のEBV-PCRの陰転化・FDG集積像の消退が確認できた。

監修者コメント

MMFは、移植後の拒絶反応の抑制などに用いられている免疫抑制薬である。本症例は、多発血管炎性肉芽腫症に対してMMFにて寛解維持中にリンパ増殖性疾患による小腸穿孔を発症した1例である。本薬剤の添付文書にも、重大な副作用としてリンパ増殖性疾患が記載されている。非移植患者におけるMMFに関連した医原性リンパ増殖性疾患による小腸穿孔は稀であるが、本薬剤の投与中はリンパ増殖性疾患などの副作用に注意すべきである。

著者(発表者)
喜瀬高庸ほか
所属施設名
東京都立多摩総合医療センターリウマチ膠原病科
表題(演題)
ミコフェノール酸モフェチルにて寛解維持中にリンパ増殖性疾患による小腸穿孔を合併した多発血管炎性肉芽腫症の一例
雑誌名(学会名)
第66回 日本リウマチ学会総会・学術集会プログラム・抄録集 719 (2022)
第66回 日本リウマチ学会総会・学術集会(2022.4.25-5.31)

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