フルオロウラシルによる冠攣縮性狭心症
2022年5月掲載
薬剤 | フルオロウラシル腫瘍用薬 |
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副作用 | 冠攣縮性狭心症 |
概要 | 56歳、男性。2021年1月下旬、心窩部違和感を主訴に近医を受診し、上部消化管内視鏡検査にて進行食道癌と診断され、当院を紹介受診した。術前補助化学療法の後に根治手術を行う方針となった。2月上旬に入院し、術前化学療法(フルオロウラシル(5-FU)800mg/m2day1-5、シスプラチン(CDDP)80mg/m2day1)を開始した。治療開始後第3病日に胸部絞扼感が出現し、5-FUの投与を中止したところ5分後に症状は消失した。心電図変化、心筋逸脱酵素の上昇は認めなかった。5-FUを再開したところ、15分後に再度胸部絞扼感が出現し、心電図にてV1に陰性T波、その他の誘導にT波の増高を認めた。5-FUによる冠攣縮性狭心症を生じたと考え、5-FUの投与を中止し症状は改善した。冠動脈CTを撮影したが、冠動脈に有意な狭窄は認めなかった。5-FUを含む術前化学療法の継続は困難と考え、その後は手術を行う方針として退院した。 |
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フッ化ピリミジン系の代謝拮抗薬である5-FUは、消化器癌をはじめとする様々な悪性腫瘍の治療に用いられている。本症例は、進行食道癌に対する術前補助化学療法で投与した5-FUにより冠攣縮性狭心症を発症した1例である。本薬剤による冠攣縮性狭心症はこれまでにも報告があるが、その機序は不明である。心疾患の既往がない患者にも発症することがあり、投与中に胸部絞扼感などの症状を認めた際には、冠攣縮性狭心症の可能性も考慮し、投与の中止などを検討すべきである。
- 著者(発表者)
- 住吉那月ほか
- 所属施設名
- 東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科
- 表題(演題)
- 5-FUによる冠攣縮性狭心症を生じた1例
- 雑誌名(学会名)
- 第668回 日本内科学会関東地方会 34 (2021)
第668回 日本内科学会関東地方会(2021.5.8)
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