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サラゾスルファピリジンによる進行性多巣性白質脳症

2022年5月掲載

薬剤 サラゾスルファピリジン化学療法剤
副作用 進行性多巣性白質脳症
概要 85歳、男性。2017年夏から関節リウマチ(RA)に対し経口ステロイドとサラゾスルファピリジン(SASP)が開始され、同年末よりSASP単剤に移行した。2018年12月に左手指の筋力低下を自覚し、2019年1月に筋力低下が左手関節に、2月には左上肢近位筋にまで拡大した。頭部MRIで右中心前回近傍白質に異常信号を認め、当科へ紹介入院となった。全身および頭蓋内に腫瘍を疑う所見は認められず、進行性多巣性白質脳症(PML)を疑い髄液JCV-DNA検査を提出し、脳腫瘍鑑別および確定診断目的に脳生検を施行した。また、RA症状は寛解していたためSASPを中断した。脳生検の結果、PMLと診断した。SASP中止1週間後から左上肢麻痺に改善傾向がみられ始めたが、追加の薬物療法などは効果がなく、リハビリテーション継続のみで経過をフォローした。SASP中止後にRA症状の再燃は認められず、診断から2年経過した時点で臨床症状再発はなく、発症前と同様の日常生活を送っている。

監修者コメント

PMLは、免疫機能低下が背景にある患者の脳白質にJCウイルスが感染することにより発症する進行性脱髄疾患である。本症例は、SASP服用中にPMLを発症したRAの1例である。SASPは免疫調整薬であり、RAだけでなく潰瘍性大腸炎に対しても使用されている。SASPによるPML発症の報告はこれまでにないが、本剤の中止のみで臨床症状および画像所見に改善がみられたことから、本剤がPML発症に関与した可能性が考えられている。

著者(発表者)
岡崎知子ほか
所属施設名
大阪警察病院脳神経内科ほか
表題(演題)
サラゾスルファピリジン服用中に進行性多巣性白質脳症を発症した関節リウマチの1例
雑誌名(学会名)
臨床神経学 61(12) 833-838 (2021.12)
第115回 日本神経学会近畿地方会

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