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ブシラミンによる尋常性天疱瘡

2014年2月掲載

薬剤 ブシラミンアレルギー用薬
副作用 尋常性天疱瘡
概要 79歳、男性。関節リウマチに対してブシラミンの内服開始後、体幹と四肢に瘙痒を伴う紅斑を認めた。1年後にブシラミンを100mgから300mgへ増量したところ、口腔粘膜疹および体幹にびらんと水疱が出現。当科受診し、皮膚生検施行。8日目に治療目的で入院した。ELISA法で抗デスモグレイン(Dsg)1抗体のIndex値が7(基準値<14)と陰性、抗Dsg3抗体は11(基準値<7)と軽度上昇していた。蛍光抗体法所見は直接法でIgGとC3が表皮細胞間に陽性であった。臨床的に体幹にびらんや弛緩性水疱、口腔粘膜にびらんがあり、病理組織学的所見、蛍光抗体直接法所見から粘膜皮膚型尋常性天疱瘡と診断した。ブシラミンの内服を中止し、プレドニゾロンの内服を開始した。プレドニゾロンを漸減しても再燃はなく、関節リウマチ治療も考慮して、プレドニゾロン減量にて治療中である。

監修者コメント

ブシラミン(リマチル®)は関節リウマチの治療薬であり、分子構造上SH基を有するSH薬に分類される。本症例では関節リウマチに対する治療としてブシラミンを増量したところ、口腔粘膜疹および体幹にびらんと水疱が出現し、病理組織所見などから尋常性天疱瘡と診断された。薬剤誘発性天疱瘡の原因薬剤として最も多いのはD-ペニシラミンや本症例のブシラミンを含むSH薬である。表皮角化細胞は多量のSH基を有しており、薬剤のSH基が生体の表皮角化細胞の細胞膜上のSH基とS-S結合することにより抗原性を獲得し、天疱瘡様症状を発症すると考えられている。ブシラミンによる尋常性天疱瘡は稀であるが、関節リウマチの治療薬として本剤を長期に使用することも多く、本症例のように増量により発症することもあるため、注意が必要である。

著者(発表者)
沼田貴史ほか
所属施設名
東京医科大学八王子医療センター皮膚科ほか
表題(演題)
ブシラミンによる尋常性天疱瘡
雑誌名(学会名)
皮膚病診療 35(12) 1129-1132 (2013.12)

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