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カボザンチニブによる腸管気腫症

2022年3月掲載

薬剤 カボザンチニブ腫瘍用薬
副作用 腸管気腫症
概要 73歳、男性。腹部大動脈瘤の精査目的のCTにて発見された左腎腫瘍に対して腎摘除術を施行、病理結果は淡明細胞型腎細胞癌の診断であった。術前より肺転移、骨転移を指摘されていたため、Nivolumab+Ipilimumabの併用療法を導入したが、Grade3の下痢を生じたため高用量ステロイド投与を要した。以降、Nivolumab単独療法、Pazopanib、Axitinibを試みたが、重篤な有害事象や病勢進行によりいずれも継続困難であった。Axitinib投与中に舌転移の増大により経口摂取困難となったため、経鼻胃管による経腸栄養とCabozantinibの投与を開始した。Cabozantinib開始後2ヵ月時点で効果判定目的のCTを施行したところ、著明な腹腔内free airおよび腸管壁内ガスを認め、腸管気腫症の診断で緊急入院となった。CTにて腸管血流不全の所見なく、全身状態良好で腹膜刺激徴候も認めなかっため、絶食およびCabozantinib投与の中止と酸素投与、予防的抗生剤投与による保存的加療のみで改善を得た。

監修者コメント

カボザンチニブは、VEGFR2、MET、AXLなどの複数のチロシンキナーゼを標的としたマルチキナーゼ阻害薬であり、がん細胞の増殖抑制および血管新生阻害作用により抗腫瘍効果を発揮する分子標的薬である。本症例は、転移性腎細胞がんに対してカボザンチニブを投与したところ、腸管気腫症を発症した1例である。腸管気腫症は腸管壁の粘膜下や漿膜内の含気性嚢胞を生じる疾患で、分子標的薬はその原因の一つと考えられている。カボザンチニブの投与中に発生した腸管気腫症はこれまでに報告されておらず、稀な症例といえる。

著者(発表者)
永本将一ほか
所属施設名
三井記念病院泌尿器科ほか
表題(演題)
転移性腎細胞癌に対するCabozantinib治療中に発生した腸管気腫症の1例
雑誌名(学会名)
日本泌尿器腫瘍学会 第7回 学術集会 プログラム抄録集(Web) UP2-17 (2021)
第7回 日本泌尿器腫瘍学会学術集会(2021.10.23-11.30)

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