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ペランパネルによるせん妄

2022年2月掲載

薬剤 ペランパネル中枢神経用薬
副作用 せん妄
概要 58歳、男性。50歳の時に右前頭葉のLow grade gliomaを診断され、経過観察された。53歳の時に脳腫瘍による症候性てんかんを発症し、抗てんかん薬を投与されたが発作消失しなかった。そのため、58歳の時に開頭腫瘍摘出術を施行された(day0)。しかし、術後も症候性てんかんは改善しなかった。Day48にペランパネル2mg/dayを追加され、day94に4mg/dayに増量されたが、day95頃より眠気と易怒性が出現した。Day111にペランパネル8mg/dayに増量されたところ、その翌日に急激に注意障害、見当識障害や記憶障害などの認知機能障害、混乱した会話、異常行動が出現した。これらの症状は日内変動が顕著であった。脳外科医より認知症が疑われたため、day118に患者は当院精神科を紹介受診した。脳波検査ではてんかん性異常波はなく、基礎律動はθ波だった。DSM-5に基づき、せん妄と診断した。せん妄の原因探索のため諸検査を行ったが、ペランパネル以外にせん妄を引き起こす原因は見つからなかった。そのため、ペランパネル誘発性せん妄と暫定診断した。ペランパネルを中止し、ラコサミドを開始した。その後精神症状が改善し、day125には見当識障害と異常行動は消失した。Day135にはせん妄の症状は完全消失した。脳波検査では基礎律動がα波と正常化していた。最終的に、ペランパネル誘発性せん妄と判断した。

監修者コメント

ペランパネルはAMPA受容体を選択的非競合的に阻害することにより神経の過興奮を抑制する新規抗てんかん薬である。本症例は、脳腫瘍による症候性てんかんに対して投与されたペランパネルによりせん妄が誘発された1例である。抗てんかん薬がせん妄を誘発することは報告されているが、これまでに本薬剤によるせん妄の報告はなく、稀な症例といえる。従来の薬剤と機序が異なる新規抗てんかん薬であっても、せん妄を誘発することがあるため注意が必要である。

著者(発表者)
竹島強ほか
所属施設名
医療法人薫風会象潟病院ほか
表題(演題)
ペランパネル誘発性せん妄:症例報告
雑誌名(学会名)
精神神経学雑誌 (特別) S583 (2021)
第117回 日本精神神経学会学術総会(2021.9.19-11.30)

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