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アセナピン、ミルタザピンによる無顆粒球症

2022年2月掲載

薬剤 アセナピン中枢神経用薬
ミルタザピン中枢神経用薬
副作用 無顆粒球症
概要 60代、女性。X年8月1日に息子の知人がCOVID-19感染疑いとなり、それに伴い自身が微熱を認めたことを契機に「コロナにかかっているのではないか」と不安が高じ、食欲不振、不眠を認めるようになった。抗原検査で陰性となるも、検査陰性でも感染が否定できないとのメディアの報道により安心できず、両側手首、左頚部を自傷し8月15日に前医に救急搬送された。創処置を行ったが、抑うつ気分、罪業妄想が強く専門的な治療が必要と判断され、8月18日に当科転科となった。当科受診時、抑うつ気分、罪業妄想、不眠、食思不振を認めていた。その為、ミルタザピンを開始し漸増した。妄想症状に対してはアセナピンを開始した。ミルタザピンの漸増に伴い、徐々に妄想は軽減し抑うつ気分も改善していったが、9月26日頃より咽頭痛、39℃代の発熱を認めた。血液検査上WBC500個/mm3、好中球41個/mm3と無顆粒球症を認めたため、血液内科にコンサルトの上、広域スペクトラムの抗生剤とG-CSFの投与を開始した。血球は徐々に回復し重篤な感染症になることはなかった。

監修者コメント

コロナ禍に発症した精神病症状を伴ううつ病に対してアセナピンおよびミルタザピンを投与したところ、薬剤性無顆粒球症を発症した1例である。両薬剤の添付文書にも、それぞれ重大な副作用として無顆粒球症が記載されている。これらの薬剤の使用中に発熱などの感染症を疑う症状が認められた場合は、稀ではあるが薬剤性無顆粒球症の可能性も考え、血液検査などを行い、適切な対処を行うことが重要である。

著者(発表者)
山本真文ほか
所属施設名
久留米大学医学部神経精神医学講座
表題(演題)
コロナ禍に発症した精神病症状を伴ううつ病治療中AsenapineとMirtazapineで薬剤性無顆粒球症を呈した一例
雑誌名(学会名)
精神神経学雑誌 (特別) S544 (2021)
第117回 日本精神神経学会学術総会(2021.9.19-11.30)

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