せりみっく 今月の症例

ホーム > 新着文献  > 五苓散による急性尿細管間質性腎炎

五苓散による急性尿細管間質性腎炎

2022年2月掲載

薬剤 五苓散漢方製剤
副作用 急性尿細管間質性腎炎
概要 82歳、男性。X-1年7月に肝門部胆管癌の診断となり、肝切除術を施行された。X-1年10月よりゲムシタビンによる術後補助化学療法が行われた。X-1年12月に下腿浮腫に対して五苓散の内服を開始され、Creは1.0 mg/dL程度で推移していた。5月よりCreが上昇しゲムシタビンの投与を中止したが、6月2日にはCre 3.02 mg/dLと急速な腎機能低下および体重増加を認め、精査加療目的に当科へ入院となった。尿蛋白および尿潜血は陰性であり、血清学的検査にて特記所見を認めなかった。薬剤性腎障害を疑い、入院後に内服薬は全て中止した。薬剤リンパ球刺激試験を施行したところ、五苓散が強陽性となった。入院第5病日に施行した腎生検では尿細管および間質の炎症細胞浸潤を認めた。
五苓散による薬剤性急性尿細管間質性腎炎(DI-AIN)と診断し、第12病日からプレドニゾロン(PSL)を開始した。腎機能は改善しCre 1.57 mg/dLまで低下したため、6月27日に退院した。PSLを漸減するも再燃なく、X年10月にCre 1.03 mg/dLまで改善しPSLを終了した。

監修者コメント

五苓散は浮腫の治療などに広く使用されている漢方薬である。本薬剤による急性尿細管間質性腎炎は稀であるが、投与中に腎機能障害などを認めた場合には、本合併症を検討する必要がある。漢方薬は一般的に副作用が少ないと考えられているが、本症例のように腎機能障害などを認める可能性もあるため、注意が必要である。

著者(発表者)
小山紗佑実ほか
所属施設名
東京医科歯科大学腎臓内科
表題(演題)
五苓散による薬剤性急性尿細管間質性腎炎の1例
雑誌名(学会名)
The Japanese Journal of Nephrology : 日本腎臓学会誌(e-journal) 63(6-E) 729 (2021.9)
第51回 日本腎臓学会東部学術大会(2021.9.25-11.10)

新着文献 一覧

PAGETOP