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含糖酸化鉄によるFGF23関連低リン血症性骨軟化症

2022年1月掲載

薬剤 含糖酸化鉄滋養強壮薬
副作用 FGF23関連低リン血症性骨軟化症
概要 50歳、女性。子宮筋腫による過多月経に伴う鉄欠乏性貧血に対して、含糖酸化鉄の静脈投与を週1-2回、長期投与されていた。3ヵ月前より誘因なく左股関節痛が出現した。2ヵ月前から左股関節痛が増悪し、さらに右股関節痛と両足関節痛も出現した。近医を受診し単純MRIにて左大腿骨頚部病的骨折と右寛骨迫骨折を認めたため当院紹介となった。血液検査にて、ALP高値、低P血症、低Ca血症、骨型ALP高値25OHvitD低値であり、骨シンチグラフィーで骨折部や疼痛部位に一致した集積を認めた。血清fibroblast growth factor23は低値だが、病歴より含糖酸化鉄長期静脈注射によるFGF23関連低リン血症性骨軟化症による病的骨折を強く疑った。含糖酸化鉄投与後1ヵ月経過しており、採血データは休薬後の改善傾向を反映していると判断した。
左大腿骨頚部骨折に関しては髄内釘による骨接合術を施行した。術後より活性化ビタミンD製剤を内服開始し、股関節痛、足関節痛も改善傾向で全荷重歩行が可能となったため自宅退院とした。その後の経過は良好である。

監修者コメント

含糖酸化鉄(フェジン®)は鉄欠乏性貧血の治療薬として広く使用されている。本症例は、含糖酸化鉄の長期投与により、低リン血症性骨軟化症を発症した1例である。含糖酸化鉄の投与により、血中FGF23が上昇し、血中リン濃度の低下から骨軟化症となり、病的骨折を来したと考えられる。本剤の添付文書にも重大な副作用として、骨軟化症が記載されている。FGF23関連低リン血症性骨軟化症は稀な有害事象であるが、本剤の長期投与中に骨痛、関節痛などの症状を認めた場合には、骨軟化症を疑い、投与の中止を検討すべきであろう。

著者(発表者)
藤田浩明ほか
所属施設名
群馬大学医学部付属病院整形外科
表題(演題)
原因不明の多発骨折の原因が含糖酸化鉄投与による低リン血症性骨軟化症と考えられた一例
雑誌名(学会名)
東日本整形災害外科学会雑誌 33(3) 341 (2021.8)
第70回 東日本整形災害外科学会(2021.9.17-18)

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