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テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムによる間質性肺炎

2014年2月掲載

薬剤 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム腫瘍用薬
副作用 間質性肺炎
概要 76歳、男性。胃前庭部を中心としたType3の進行胃癌で、血清CEA値と血清CA19-9が高値であったため、術前化学療法の適応とした。S-1内服2コース後にS-1+CDDP療法を行い、術前治療終了後6日目に労作時の呼吸困難が出現し、緊急入院となった。胸部X線写真とCT検査で、両肺野にびまん性の浸潤陰影を認め、気管支肺胞洗浄では好中球とリンパ球の増加を認め、経気管支肺生検で間質性肺炎と診断した。薬剤リンパ球刺激試験ではS-1が陽性、CDDPが陰性であった。以上よりS-1に起因する間質性肺炎と診断した。ステロイドパルス療法も行ったが効果なく、入院24日目に急速に呼吸状態が悪化し、人工呼吸管理に移行したが、38日目に死亡退院となった。

監修者コメント

本症例では、Type3の進行胃癌に対して、down staging目的でS-1とCDDPの併用による術前化学療法を施行したところ、急性間質性肺炎を発症した。DLSTの結果からS-1に起因する薬剤性間質性肺炎と考えられた。S-1は重篤な有害事象が比較的少ない経口抗癌剤であるが、本報告のように薬剤性間質性肺炎により死亡する症例もみられる。術前化学療法は非治癒手術となる可能性の高い症例にdown staging目的で施行されているが、本症例のように合併症により手術の機会さえも失ってしまうことがあり、十分なinformed consentが必要である。

著者(発表者)
梶原啓司ほか
所属施設名
佐世保中央病院外科ほか
表題(演題)
術前化学療法後に間質性肺炎を併発し不慮の転帰をとった胃癌の1例
雑誌名(学会名)
癌と化学療法 40(12) 2310-2312 (2013.11)
第35回 日本癌局所療法研究会

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