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シスプラチンによる特発性冠動脈解離、急性前壁心筋梗塞

2022年1月掲載

薬剤 シスプラチン腫瘍用薬
副作用 特発性冠動脈解離、急性前壁心筋梗塞
概要 44歳、女性。内科的基礎疾患なし、喫煙歴なし。膣癌に対し、シスプラチン(CDDP)併用の根治的同時化学放射線療法を行っていた。治療開始後44日目(weekly CDDP 40mg/m2 6コース目 day8 全骨盤外照射56Gy/28Fr RALS 18Gy/3Fr照射後)、放射線治療から帰室後、突然の胸痛を訴え、冷汗と末梢冷感が出現した。12誘導心電図ではV1-5、II、IIIでST上昇を認め、冠動脈カテーテル検査を施行した。カテーテル検査にて、冠動脈解離による急性前壁心筋梗塞と診断され、そのまま経皮的バルーン血管形成術を行い再灌流を確認できた。術後は薬物治療とリハビリテーションにより全身状態は回復し、残りの放射線治療を完遂後に自宅退院した。

監修者コメント

特発性冠動脈解離(SCAD)は、40~50歳代の女性に多く、動脈硬化性変化が少ないにもかかわらず、冠動脈の中膜が解離して血流が途絶することで、急性心筋梗塞を発症する稀な疾患である。本症例は膣癌に対するシスプラチン併用での根治的同時化学放射線療法中にSCADを発症した1例である。これまでにもシスプラチン投与とSCAD発症との関連が疑われた報告があり、稀な有害事象ではあるが、シスプラチンの投与中に胸痛などの症状を認めた際には、SCADも念頭に置く必要がある。

著者(発表者)
松本裕佳ほか
所属施設名
産業医科大学ほか
表題(演題)
腟癌に対する根治的同時化学放射線療法中に特発性冠動脈解離を発症した1例
雑誌名(学会名)
第78回 九州連合産科婦人科学会・第72回 九州ブロック産婦人科医会 プログラム・抄録集 34 (2021)
第78回 九州連合産科婦人科学会 第72回 九州ブロック産婦人科医会(2021.5.22-30)

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